防災力アップ③まちの安全確保のためにできることは?

防災力アップ②では住まいの安全確保について、特に地震が発生した場合を想定して寝室から玄関までの「安全確保」について考えてみました。今回の防災力アップ③は、まちの安全確保をテーマに考えてみましょう。

地震が起きたらあなたはどう行動する?

想像してみましょう。自分の安全確保、次に家族の命が安全か確認、ゆれが落ち着いたら速やかに外に出て状況を確認します。

なぜ、外に出るか? それは、地震には余震があるからです。・・・いえいえ、いまの揺れが実は余震であって、本震がまもなく来るかもしれないのです。

外に出るほうが危険、という場合もあるでしょう。それは住環境によっても違います。マンションの高層階に住む人と戸建て住宅に住む人とでは、安全確保のための行動が違います。しかし“余震に注意するということ”、これはどんな家に住んでいても共通することです。

また、家の中での安全確保にも状況によって違いがあります。例えば、地震発生時にトイレやお風呂に居る場合、台所で煮炊きしている場合など、状況によってまちまちです。もしも、いま地震が起きたら自分はどんな行動をするだろうか、と平常時から考えておくことが大事です。

余震はくるものだ、と知っておく

新聞に悲しい記事が載っていたことを思い出しました。記事はこんな内容でした。女の子がお風呂に入っているときに地震が起き、おばあちゃんがその子に声をかけたそうです。「早く体を拭いて着替えなさい、余震がくるかもしれないよ」。おばあちゃんの言った通りに再び地震がありました。その地震が本震でした。女の子のご遺体は脱衣所で下着をつけた姿で見つかった、ということ・・・

どうすればよかったのでしょう。声をかけたおばあちゃんも、すぐに着替えた女の子も、命を守るためにベストを尽くしたに違いありません。誰が悪いわけでもありませんが、このようなことが起きてしまうのが災害です。

落ち着いたら外に出て状況確認。お隣は?ご近所は?

余震には十分に気を付けて外に出ます。頭にヘルメット、手に厚手の皮手袋があれば役立ちます。もしも、家が倒壊していて家族が埋まってしまっていたら、瓦礫(がれき)をのけて助け出さなくてはなりません。普通の布の軍手では手にケガをしてしまい作業できません。皮手袋は非常時に役立ちます。非常持ち出し袋に入れておくとよいです。

家族の命が守れたら、次にお隣ご近所の様子を見ます。家が倒壊していないか、火災は起きていないか(においがしないか)、家から出られなくて困っていないか(声や音は聞こえないか)確認します。

火災が発生していたら大変です。家庭内で初期消火できていればいいのですが、もし煙があがっていたら、まず「119」へ通報。同時に近所で声を掛け合い消火に努めます。

誰かが家や家具の下敷きになって、助けを求めていたら、自分の安全を確保したうえで救助します。なので、ヘルメットと皮手袋、夜間の場合はヘッドライトが必要になってきます。局地的な災害なら「119」に通報すれば事足りるでしょうが、大きな災害時は消防車も救急車もなかなか来てくれません。阪神淡路大震災ではお隣ご近所の助け合い「共助(きょうじょ)」で命をとりとめた人が多数いたのも事実です。

兵庫県南部地震直後の様子はどうだった?

兵庫県芦屋市にある私の家は半壊でした。幸い家族も怪我もなく無事でした。1995年1月17日の早朝に兵庫県南部地震は起きました。ベッドの上で飛び跳ねるほどの揺れ。ピカッと青白く光ったので原子爆弾が落ちたのだと思いました。

朝日上るころには家の中に散乱したガラスの破片を拾ったり、ほうきで掃いたりして、まずは歩けるようにしました。テレビがひっくり返っていたり、冷蔵庫が倒れて中身が全部でていたり、父のコレクションのグラスがすべて割れていたり・・・その程度の状態だったので、町がどんなことになっているか、まったく想像できていませんでした。

1月17日の震災当日は大学4年生の妹の就職活動のための書類締切日でした。妹が絶対に書類を神戸市の岡本にある会社に届けなくては、というので午前9時ごろ私と妹は車で芦屋市の自宅から岡本に向けて出発しました。

車窓から見る、まちの様子は・・・。砂埃が舞う中、寝巻のまま呆然と倒壊した家を見つめ何もできないでいる女性の姿、瓦礫(がれき)と化した家に登って作業する人々。道がぼこぼこに波打って、そこかしこに割れ目ができている道。信号が停電していたので交差点では譲り合いながら進みます。会社のある神戸市東灘区といえば阪神高速道路が崩壊したあたりです。妹があこがれていたインテリアの会社には誰もいないようでした。郵便ポストに書類を入れて引きかえしましたが道路はすでに大渋滞になっていました。

テレビ・ラジオの報道で最初は死者数が一桁でした。まさかそんな大災害になろうとは・・・。結果として6434人の命が失われました。

まず自分、そして家族。つぎにお隣近所の命をまもる行動を!

まちの安全センター‘避難所’をどう開設する?

自分の命、家族の命、お隣ご近所の命を守ることができたとして、次に考えることは、これからの生活をどうするか、ということです。自宅が滞在可能であれば避難所へ行くより、むしろ「在宅避難」がのぞましいです。なぜなら、大規模な災害の場合、想定外の避難者が避難所へ押し寄せることも考えられるからです。

阪神・淡路大震災のとき避難所の開設は速やかだったのでしょうか。災害当日、被災者はどのような行動をとったのでしょう。当時のことを教訓としてまとめられたものが『防災士教本』に掲載されていました。

阪神・淡路大震災では、避難者があまりにも多く予め指定していた避難所では収容しきれず新たに多くの施設が追加された。神戸市のピーク時の避難者数は約24万人、全人口の16%だった。また、新潟県中越地震では、小千谷市の避難者数は全人口の62%に及んだ。

『防災士教本』第9講(134頁)避難所運営と仮設住宅の暮らし

このことから、指定されている避難所では収容しきれない多くの人が避難しにくることも考慮すべきことがわかります。地域住民だけに限定されず、他の地域からの避難者や、たまたまその土地を訪ねていた人なども対象となることを前提に、避難所運営について考えていく必要がありそうです。

また、在宅避難している住民へのケアも必要となるでしょう。避難所に寄せられる支援物資を在宅避難している家庭へも供給することも考慮しておくべきでしょう。情報がすみやかに届くよう、掲示板などをつくる必要もありそうです。避難所は、いわば「まちの安全センター」のような機能を果たすべきでしょう。

ひとたび大災害が発生すると、初日から避難所生活が始まることになる。自宅を失って動揺するなか、冷静に避難所生活を開始することはきわめて困難である。したがって、普段から避難所ごとに運営計画書を作成しておくことが望まれる。その内容は、「運営組織」と「生活のルール」と「部屋割り」が中心になる。

『防災士教本』第9講(140頁)避難所運営と仮設住宅の暮らし

これを読んでわかること。それは、被災した避難者たちがその日から協力して避難所を運営していかなくてはならない、ということ。被災の度合いも年齢も経験も異なる避難者の中から、どのようにして「運営組織」をつくり「生活のルール」や「部屋割り」を決めていくのでしょうか・・・。想像もできないのですが、この部分を担うのが防災士や自主防災会の役割のような気がしています。

まずは、自分の命をまもる(自助)。そして、外にでてお隣ご近所の命をまもる(共助)。そして、避難所へ向かう。一番最初に避難所に着いた人が「避難所運営マニュアル」にしたがって運営できるのが理想でしょうが・・・。そうそううまくいくとは思えません。

ある程度、避難者が集まった段階で話し合う場をもうけ、これから続く避難所での共同生活においてトラブルにならないための「生活のルール」「部屋割り」を決め、避難所運営に必要な役割を決めていくことになりそうです。

行政の防災担当者が手助けしてくれる規模の災害なら問題ないんです。けれども大災害の場合は行政そのものも被災するので、避難者のうちの誰かが声をあげ、リーダーとなり避難所を運営することになります。

その指針となるような「避難所運営マニュアル」があらかじめ用意されていれば、「生活のルール」「部屋割り」「役割分担」などデリケートな事柄について話し合いしやすくなるのではないでしょうか。

あらかじめ避難所の運営計画をたてておく!

避難所運営はだれがするの?

みなさんのまちには自主防災組織はありますか?防災についての会を催したり訓練を実施したりされているでしょうか。消防団も活発に活動されているでしょうか。我がH自治会にはまだありません。

まちのために活動すること。ましてやボランティア(無償)で活動することに現役世代はできれば避けたいと思ってしまいがちです。家庭をもち仕事をしながらボランティアでまちの安全を担うということ。なかなか簡単なことではないでしょう。けれども、このような組織が災害時に最も力を発揮することもわかります。

火を消す、ということに限ることなく、あらゆる災害を防ぐことを目的に、まちには消防団のような自主防災組織が必要です。日本中どこの自治会でも防災をテーマに話し合われているこの頃ですが、我がH自治会にもようやく「自主防災会」を立上げようという声があがりました。

避難所運営を「自主防災会」が担えるのか?

しかし、自主防災会が避難所を運営できるか疑問です。あらかじめ災害時の担当者を決めておく、というのにも無理はないでしょうか。大災害の場合、行政が被災当事者となるのと同じく、自主防災会メンバーもみな被災者となるからです。

被災し避難所に集まる人々の、被害の大小をはかることはできません。家屋全壊、半壊、一部損壊、身体的に怪我をして辛い人もいれば、精神面で辛い人もいます。災害にあってから、心身にダメージを受けるわけですから・・・そういった個々の状況や事情を抱えながらの避難所運営は想像し難いのではないでしょうか。

まちの安全確保のために「避難所運営マニュアル」の作成を!

自主防災会が平常時に話合って決めておくこと、それは・・・

  • 自治会の備蓄倉庫の品目や機材などに不足はないか、
  • その管理(点検や補充)は誰がどのように行うのか、
  • 避難所に指定されている中学校、行政担当職員との定期的な面談、
  • 防災に関する会議などへの参加、
  • 地域住民への防災意識啓発活動など。
  • そして、大事なことは「避難所運営マニュアル」を作成しておくこと。

自主防災会のメンバーが避難所を開設できない場合を想定し、一番に避難所を開設した人が何をすべきかが記されているものを準備しておくのがよいのではと思います。

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